当会事務局長 加藤 正現
先日、北海道・知床が世界自然遺産に登録された。日本では、白神山地、屋久島に次いで3カ所目である。この登録によって知床の豊かな自然が永遠に守られることになるならば、これほどうれしいことはない。しかし、現実には白神や屋久島には世界自然遺産に名を借りた観光ツアーが企画され、多くの観光客が訪れることとなった。その結果地面が硬くなって屋久杉やブナの巨木が枯れたり、非在来種の侵入による生態系の破壊も起きているという。これらの報道を聞くにつけ、いったい何のための登録だったのかと疑問に思わざるを得ない。知床が、その二の舞にならなければと願うものである。
振り返って、わが白山はどうであろうか?当会が設立当初(1990年設立)から大切にしてきた登山道に別山・市ノ瀬道(通称チブリ尾根登山道)がある。白山の数ある登山道の中でもほとんど人間の手が加えられていない貴重な登山道として私たちはこれまで大切に守ってきたという自負を持っている。ところがここ数年、巨木の天然更新が一気に進み、また登山者の増加などによりずいぶんと様子が変わってきたという話を聞く。以前のうっそうとした森が、ところどころで今はずいぶん明るくなってきたという。雪の重みで倒れかかった木を登山者にとって危ないからということで1本切ってしまうだけで森の雰囲気はずいぶんと異なってしまう。致し方のないことなのかもしれないが、個人的には出来るだけ自然のあるがままに任せたいという思いを持つ。白山が国立公園に昇格して既に40年以上が経過した。この間「変わらぬもの」もあれば「変わってしまったもの」もある。せめてこのチブリ登山道がいつまでも「変わらぬもの」の代表であり続けてもらいたいと願っている。
(会報NO.67原稿)