2004年3月31日 三津野 真澄
去年のゴールデンウィークに鹿島槍ガ岳に登った時のこと。積雪を解かして調理用の水を作ったのですが,そのまま飲んでみると「ウン?酸っぱい」。はっきりと分かるくらいの酸性雪でした。pHが5.6より小さいものを酸性雨(雪)と呼び,その原因は大気汚染物質の硫黄酸化物SOxや窒素酸化物NOxです。自動車,工場やボイラー等の排気ガスが汚染源ですが,排ガス規制が進んだ現在では国内よりも中国,韓国など外来のものが多くを占めるようになってきました。
酸性雨による森林枯死は,ドイツや北欧が有名です。枯れて山腹に灰色の幹だけが立ちつくしている死のモミ・トウヒ林。写真で見た人も多いのではないでしょうか。日本ではまだそれほどには被害が顕著でないようですが,ヨーロッパとの違いは何によるのでしょうか。その理由は,日本の土壌が弱アルカリ性であり酸性雨を中和する能力が優れているためと考えられています。しかし酸性雨が降り続けば話は別。土壌は次第に中和能力を弱められ,ある日を境に突然土壌は酸性側へ傾き,植物は一気に枯れるだろうと予測されているのです。実際に北アルプスを歩いていると,東側斜面では元気の良いハイマツが西側斜面では赤く枯れている風景を目にします。冬季に吹く西寄りの季節風が大陸からの原因物質を運び続けたため,既に土壌の中和能力も限界に達していると考えられます。
それにしても,鹿島槍ガ岳では雪を解かした鍋の底に黒いススが沈んでいるのが気に懸かりました。下山後に調べてみると,このススは遠くイラクより飛来したらしいことが分かりました。当時イラクは戦争状態であり,油田が爆撃を受け炎上して大量のススやSOx,NOxが排出されていました。それらは上空のジェット気流に乗って東アジアに流れ,日本に降ったという訳です。地球はひとつであり,環境問題は国際的視野で解決しないといけないと実感させられた酸性雪でした。
